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2024年から発行の始まる新1万円札には、「日本資本主義の父」と謳われた渋沢栄一の肖像画が描かれます。
日本における銀行制度の発足や明治期の通貨の発行などにも携わり、現代日本の経済発展に貢献した人物です。
そんな渋沢栄一が発行に関わった通貨のひとつに、日本銀行兌換銀券が存在します。
この記事では、明治日本を支えた日本銀行兌換銀券の種類と、それぞれの希少価値について解説していきます。
日本銀行兌換銀券は、明治初期に発行された紙幣の一種です。明治初期の日本には、通貨として使用できる紙幣が数多く存在しました。
この時期の紙幣には、江戸時代に発行された各藩の藩札や、民間銀行発行の紙幣、政府発行の紙幣などが挙げられます。
しかし、紙幣の種類が多くなると価値をすり合わせるのが難しくなり、取引の場が混乱するだけです。結果、明治初期の日本経済は通貨の価値が大幅に下落し、混迷を極めていました。
この状態を打開するために、政府は紙幣の発行元をひとつに限定することを決めました。その決定に基づき、1894年に日本銀行を設立、翌年から日本銀行兌換銀券の発行をはじめます。
まずは、日本銀行兌換銀券について誕生の経緯など解説していきます。
兌換券とは、簡単に言えば「銀行に持っていくと同じ価値の金や銀と交換できる紙幣」です。古来より洋の東西を問わず、通貨と言えば金銀銅などの貴金属が使用されていました。
しかし、金属製の貨幣の共通の問題として、重くかさばることが挙げられます。特に金は非常に重い金属であるため、枚数が増えると人力では運搬さえ困難です。
この負担は商取引にとっては障害でしかありません。
そこで各国は国内の金銀を1か所に集め、代わりに兌換券を発行します。兌換券自体は、ただの紙です。しかし、いつでも同じ価値の金銀と交換できるため、貴金属と同じ価値を得ます。
そのため商取引においても、かさばる金属通貨よりも持ち運びに便利な兌換券が使用されはじめます。
このように、金や銀の価値を経済の中心に置いた通貨体制を、それぞれ金本位制度、銀本位制度と呼びます。
日本でも日本銀行の設立を受け、銀本位制度に基づいた兌換券である日本銀行兌換銀券の発行を開始します。
初期の兌換銀券は旧式とよばれ、発行された全ての紙幣に大黒天とネズミが描かれているのが特徴です。
大黒天が描かれたことから「大黒札」とも呼ばれる旧式の兌換券は、偽造防止のための特殊インクの使用や紙の耐久性の向上など、当時の技術の最先端を詰め込んでいました。
しかし、紙を丈夫にするために練り込んだコンニャク粉が原因となり、虫やネズミに食べられる被害が続発します。
また、インクに使用した鉛白によって、温泉地では硫化水素と反応して色が変わってしまうという欠点がありました。
これら旧式の欠点を改善して、1888年から発行が始まったのが改造式と呼ばれる兌換銀券です。
また、改造式の発行と前後して日本は金本位制度へと移行、金と兌換できる紙幣になりました。
その後の2度の世界大戦を経て、日本は金本位制度から離脱します。現在、発行されている紙幣は金や銀との交換ができない不換紙幣です。
また、貨幣制度も政府が自国通貨を自由に発行できる管理通貨制度へと変化したため、兌換紙幣は通貨としての役目を終えています。
日本銀行兌換銀券に限らず、紙幣には常に汚損や火災などのリスクが付いて回ります。また、流通の妨げになる旧紙幣は、新紙幣の発行が始まると日本銀行によって回収されます。
発行から100年以上経過した日本銀行兌換銀券もまた、市場に出回った多くの紙幣が回収済みです。
そのため、日本銀行兌換銀券は発見されること自体が珍しく、古紙幣の取引市場では記載された額面の金額よりも圧倒的に高額で取引されています。
特に、大黒天が描かれた「大黒式」と呼ばれる旧式の兌換銀券に至っては、汚損や火災に加えて虫やネズミによる食害が発行当時から相次いだため、改造式よりも残存枚数が少ないとされています。
ここからは、発行された旧式と改造式、それぞれ4種類の日本銀行兌換銀券の取引相場や特徴について解説します。
発行年~廃止年 | 1885年~1939年 |
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図柄 | 表面に大黒天像 |
希少価値 | 極めて希少 |
取引価格 | 取引事例なし |
日本銀行兌換銀券のひとつである旧式100円券には、現在のところコレクターによる買取事例が存在しません。
主に銀行間での取引に使用される高額紙幣のため、発行枚数自体が合計で15,900枚と、歴代の紙幣と比較しても極めて希少価値の高い紙幣です。
また、記録によると廃止時に市場に出回った紙幣のうち、未回収は27枚とほぼ100%を回収できたとされています。
現存するかも疑問視されており、コレクターのみならず各地の博物館や研究所も探し求めている幻の紙幣です。
紙幣に描かれた大黒天の図案は、お雇い外国人の版画家エドアルド・キヨッソーネが、当時印刷局に勤めていた書家の平林由松をモデルにして描いたものとされています。
また、キヨッソーネは100円券以外の紙幣のデザインのほか、明治時代の切手のデザインや明治天皇の肖像画なども手がけています。
発行年~廃止年 | 1891年~1939年 |
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図柄 | 藤原鎌足の肖像画 |
希少価値 | 極めて希少 |
取引価格 | 取引事例なし |
改造式兌換銀行券の100円券には、藤原鎌足の肖像画が描かれています。また、紙幣の枠が眼鏡のように見えることから、「めがね鎌足」とも呼ばれる紙幣です。
鎌足本人のものとされる肖像画は存在しないため、多くの文献や彫刻を参考にしつつ、当時の大蔵大臣であった松方正義をモデルとして描かれています。
改造式もまた、旧式同様に発行枚数自体が非常に少なく、廃止時の回収率も高かったため、現存枚数は数枚程度と推測されています。
取引市場に出てきた場合、改造式100円券は、その希少価値の高さから数千万円はくだらないでしょう。
発行年~廃止年 | 1885年~1939年 |
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図柄 | 表面に大黒天像 |
希少価値 | 非常に希少 |
取引価格 | 10万円~150万円 |
日本銀行兌換銀券の旧式10円券は、日本銀行が最初に発行した紙幣です。1円券と100円券も同年の9月に発行が始まっていますが、10円券だけは一足早く5月に発行が開始されました。
また、旧式の兌換銀券のなかでは、唯一英語による兌換に関する文言がないことが特徴です。
一般に流通する最高額紙幣であるため、100万枚以上発行された記録が残っています。
そのため現在も個人宅から発見されるなど、兌換銀券のなかでは比較的見つけやすい紙幣と言えるでしょう。それでも未使用であれば50万円以上の高値で取引されています。
発行年~廃止年 | 1890年~1939年 |
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図柄 | 表面に和気清麻呂の肖像画 |
希少価値 | 非常に希少 |
取引価格 | 10万円~80万円 |
改造式の10円券には、奈良時代の貴族である和気清麻呂の肖像が描かれています。また、表面の縁に8頭の猪が描かれているため、「表猪10円札」とも呼ばれる紙幣です。
旧式とは異なり、英語表記の兌換に関する文言も記載されています。
記録に残る発行枚数は他の兌換紙幣と比べて少し多いですが、戦争や災害の影響もあり多くは消失しています。
現在まで残っている紙幣は非常に希少なため、コレクター人気も高く、未使用品であれば最大で80万円前後、使用済みでも最大20万円前後の買取額が期待できます。
発行年~廃止年 | 1886年~1939年 |
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図柄 | 裏面に大黒天 |
希少価値 | 希少 |
取引価格 | 5万円~40万円 |
旧式の5円券は、唯一裏面に大黒天が描かれているのが特徴です。そのためコレクターの間では「裏大黒天」とも呼ばれます。
他の旧式紙幣の裏面には、偽造に関する罰則規定などが書かれていますが、旧式の5円券だけは罰則規定が表面に額面数字とあわせて印刷されています。
また、旧式の兌換銀行券のなかで、最も遅く発行が始まりました。
1888年の改造式発行までの2年間で200万枚以上発行されたため、希少価値はやや低くコレクターの間では使用済み紙幣が比較的頻繁に取引されています。
しかし、未使用品は全くというほど確認されていません。もし未使用品が見つかれば、最低でも15万円前後で取引されるでしょう。
発行年~廃止年 | 1888年~1939年 |
---|---|
図柄 | 表面に菅原道真の肖像画 |
希少価値 | 希少 |
取引価格 | 5万円~35万円 |
改造式の兌換銀行券の5円券は、右側に菅原道真の肖像画、中央に分銅が描かれています。この形からコレクターの間では「分銅5円」と呼ばれる紙幣です。
また菅原道真にちなみ、輪郭には梅の花が描かれています。
発行枚数自体が非常に多いため、希少価値はそれほど高くありません。そのため、使用済みの紙幣の相場は5万円~10万円程度です。
ただ、発行当時から商取引に頻繁に使われたこともあり、未使用品はそれほど残っていません。もし未使用品であれば、30万円前後が相場になります。
発行年~廃止年 | 1885年~現行紙幣 |
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図柄 | 表面に大黒天像 |
希少価値 | 普通 |
取引価格 | 5,000円~8万円 |
旧式の兌換銀行券の1円券は、現在法律上有効な日本最古の通貨です。そのため、法律上は現在でもお店で1円として使用できます。
ただ、日本において金本位制度は廃止されたため、兌換紙幣と記載されていますが、金や銀との交換はできません。
現在でも法的に通用する紙幣ですが、古銭市場における価値の方がはるかに高くなります。
発行枚数が多いため、希少価値は高くありませんが、未使用品であれば額面を大幅に上回る数万円単位で取引されています。
発行年~廃止年 | 1889年~現行紙幣 |
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図柄 | 表面に武内宿禰(たけうちのすくね)の肖像画 |
希少価値 | 普通 |
取引価格 | 500円~2万円 |
改造式の1円券は1943年の新紙幣まで実に50年以上発行され、現時点で日本で最も長期間発行された紙幣です。
旧式の1円札と同様に、金や銀との交換はできませんが、さまざまな紙幣に関する法律の対象外となったため、現在でも額面の1円が保証されている通貨です。
50年以上も発行されたため、大正年間に額面が漢数字からアラビア数字に変わっています。
古銭的な価値としては、初期の漢数字のものが高く取引されており、1万円以上の値が付くことも珍しくありません。
対して、後期のアラビア数字のものは100枚1束で取引されることもあり、あまり高額では取引されていません。
紙幣は多くの人から人へ渡るため、一般的な紙よりも丈夫に作られています。それは日本銀行兌換銀券も同様です。
しかし、発行されてから実に100年以上も経っているため、どうしても経年劣化は避けられません。やはり高額で買い取ってもらうためには、美品であることが求められます。
ここからは、兌換銀券を少しでも高く買取してもらう方法を紹介します。
日本銀行兌換銀券のうち、特に旧式の銀券は材料にコンニャク粉を使用しているため、当時からネズミや虫などに食べられる事例が後を経ちませんでした。
また、偽造防止のために使用した特殊なインクも変色しやすく、紙幣自体が劣化しやすい特徴を持っています。また、紙幣である以上常に汚損や火災のリスクは付いて回ります。
劣化を避けるためにも保存状態には細心の注意が求められます。特に空気や水に触れることは大きなダメージになるため、ケースに入れて保管する場合も可能な限り隙間を作らないことが重要です。
また、ケースは割れにくく燃えにくいものを使用すると、汚損や火災のリスクを低減できます。
日本銀行兌換銀券は発行形態の都合上、ほとんどが日本銀行に回収されています。回収をまぬがれたものも戦火や災害の影響などで消失しており、現代では高額紙幣はほとんど残っていません。
そのためコレクターの間では希少価値が高く、非常に高額で取引されています。
しかし、兌換銀券に適切な値段を付けるためには、発行から現在に至るまでの複雑な歴史や兌換銀券に関する幅広い知識が求められます。
兌換銀券を適正に買い取ってもらうためにも、正しい知識と実績のある鑑定士に依頼しましょう。
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