金貨投資が注目を集めている。少額からの投資も可能で国内の売り上げは好調だ。金貨や金地金(じがね)の売買価格には消費税がかかるため、4月の消費増税後には価格に税率引き上げ分が上乗せされる。少しでも売却益を増やそうと、3月末までに買い求める動きも今後増えそうだ。
国内で購入できる金貨はオーストリア造幣局が発行する「ウィーン金貨ハーモニー」や、カナダ王室造幣局の「メイプルリーフ金貨」、オーストラリア・パース造幣局の「カンガルー金貨」がある。純金製で「地金型金貨」とも呼ばれる。流動性が高いうえデザイン性も高い。とくにウィーン金貨には楽器の絵が施され、カンガルー金貨は毎年裏面のデザインが変わる。最少で0.1トロイオンス(約3グラム)硬貨から購入でき「地金の延べ棒より手軽に投資できるため、若年層が買う例も多い」(三菱マテリアル)。
ウィーン金貨の2013年国内販売量は6万6000トロイオンス(約2トン)と前年から19.6%増えた。14年1月も「前年同月比3割増」(国内総代理店の田中貴金属工業)と売れ行きは好調だ。4月の消費増税で金地金の税込み小売価格も上昇し、貴金属地金商は値上がり前の購入を急ぐ消費者が増えるとみている。
金貨の価格は金の国際相場に連動して日々変動する。だが加工費が延べ棒よりも高くなる。販売価格、買い取り価格ともに同じ重さの延べ棒よりも割高に設定される。
ウィーン金貨は3月4日時点の小売価格(税込み)は、1トロイオンス硬貨が15万6739円(1グラム約5039円)。一方で延べ棒は1グラム4666円だった。金貨の売買には手数料は不要だが、地金の金貨では必要となる。おおむね「50グラム未満の少量なら金貨のほうが売買の価格差が小さくなる」傾向がある。
相場の値上がり局面で、より高値で売れる機会を逃したくない消費者には「保有分から1枚ずつ売れる金貨は魅力的」(徳力本店)という。
金の延べ棒とは異なる保有リスクもある。金貨の表面に傷やへこみができると、価値が薄れ、買い取り価格が下がる。田中貴金属工業の場合、傷のある1トロイオンス金貨は無傷のものに比べ、約6820円安くなる(3月4日時点)。
オリンピックの開催時などに発売される「記念金貨」もある。最近はソチ五輪やロンドン五輪で販売された。地金型の金貨より割高感はあるが、販売数量が限られ希少品となる場合もある。
金貨投資も金相場の変動によって利益を得られるとは限らない。地金と同様に売買によって利益が出ると課税の対象となる場合もあるが、収集する楽しさがあるといえる。