なぜインフレ抑制に利上げをするのか 世界のインフレと金価格や生活への影響とは
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ニュースや新聞などで「インフレ」という言葉をよく目にすると思います。
「インフレ」とは、「インフレーション」の略で、経済用語で物価が継続的に上昇していることを指しています。
コロナ禍以降、ウクライナ紛争やガザ地区で起きたイスラエルとハマスの紛争などさまざまな要因により、先進国をはじめ多くの国々でインフレが起こっています。
そこで、今回はインフレと利上げの関係、そして金価格や生活にどのように影響するのかを解説します。
1. 日本だけではない 世界でもインフレが起きていた
日本では1990年代後半から約30年間、「デフレの時代が続いていた」といわれています。
「デフレ」とは、正式には「デフレーション」と呼び、インフレとは反対に物価が継続的に下落している状態です。
しかし、2021年頃から物価が上昇しはじめ、最近では日銀総裁が「デフレではなくインフレ状態にある」と述べました。
そして、インフレは日本だけではなく、世界中で進行しています。
物価の変動度合いを表す指標として「CPI(消費者物価指数)」があり、このCPIを前年と比較したものが「物価上昇率」または、「インフレ率」です。
IMF(国際通貨基金)が発表した2024年の世界のインフレ率は、5.94%と予測されています。
同じく、IMFが発表した2023年のインフレ率の高さを国別で見ると、ジンバブエが最も高く、次にベネズエラ、スーダンと続きます。
先進国では、イギリスが7.31%、ドイツ6.03%、フランス5.66%、アメリカ4.13%です。
日本のインフレ率は3.23%とそれほど高くなく、カナダの3.88%や韓国の3.59%に比べるとまだ低い数字で、世界から見るとインフレがそれほど高い状態ではありません。
次に、日本と経済的に関係が深いアメリカと、世界で最もインフレ率が高いジンバブエで起きたインフレについて解説します。
■ アメリカで起きたインフレ
現在、アメリカではインフレが進行しています。
今回のインフレは2021年からはじまり、2022年に急加速しました。
2021年12月の米国のCPIは前年比7.0%を記録し、1990年の湾岸危機や2008年の原油価格高騰時を上回る、約40年ぶりの歴史的なインフレになったのです。
インフレの主な要因は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、供給チェーンの混乱や労働力不足が発生し、物価上昇したことです。
また、パンデミック対策としての大規模な財政刺激策や現金給付が消費者の需要を押し上げ、インフレを促進しました。
さらに、ウクライナ紛争の影響でエネルギー価格が急騰したことも影響しています。
現在、アメリカで進行しているインフレは「コストプッシュインフレ」です。
インフレには「コストプッシュインフレ」と、「デマンドプルインフレ」の2つの種類があります。
「コストプッシュインフレ」は、企業の生産コストが上昇して起こるインフレです。
原油価格の高騰や、人材不足によるコスト上昇が製品の価格に影響して物価が上昇し、需要が減少して、企業の利益を圧迫するため「悪いインフレ」と呼ばれています。
一方、「デマンドプルインフレ」は、景気が上昇して、需要が増えて、インフレになることです。
需要が増えると売上や利益が増加して、従業員の給与が上がり、新たな設備投資も可能です。
さらに、賃金が上昇すると消費が増えるため、景気が好循環なるため、「良いインフレ」と呼ばれています。
現在、CPIの高止まりが続いており、今後は物価上昇の勢いが緩やかになると予測されています。
■ ジンバブエで起きたインフレ
アフリカ大陸の南東に位置するジンバブエ共和国。
ジンバブエは1980年にイギリスから独立し、ムガベ首相が指導者として就任しました。
1987年にムガベ首相は大統領に就任し、2017年にクーデターで失脚するまでムガベ政権は続きます。
2000年には、白人が所有する土地を強制収用する法律が施行され、結果として農業の崩壊を招きます。
この政策により物資が不足したことが、過度に物価が上昇して貨幣の価値が下がる「ハイパーインフレ」の要因となったのです。
ジンバブエ政府は、公務員や兵士の給与を上げるため通貨を発行し続け、インフレを加速させました。
その結果、2008年には年率220万%もの物価上昇が記録されます。
2000年から2009年にかけて、ジンバブエドルのインフレ率は急激に上昇し、日本円にしてわずか0.0003円にしかならない、1,000億ジンバブエドルが流通するようになりました。
その対策として、ジンバブエでは通貨の単位を変更するデノミネーションが何度も行われます。
そして、2009年にジンバブエドルの発行を中止して、アメリカドルと南アフリカランドが通貨として使用されるようになりました。
2019年にジンバブエ政府は「RTGSドル」を通貨としましたが、2020年3月には紙幣不足への対策として米ドルも再導入されます。
RTGSドルは、「Real Time Gross Settlement」の略で、ジンバブエの法定通貨として2024年4月まで流通していました。
そして、2024年4月には金に裏付けされた「ジンバブエゴールド」が法定通貨として新たに発行されます。
2. インフレは抑制できる
インフレは、簡単にいうと「供給よりも需要が多い状態」で起こります。
つまり、「供給と需要のバランスで価格が決まる」市場経済の原理によって起こるものです。
ゆっくりと進行したインフレであれば、収入も追いつくため家計への影響はそれほど深刻ではありません。
しかし、急激なインフレが進行すると、収入が追いつかず、家計を圧迫することになります。
そのため、中央銀行は急激なインフレを抑制するための金融政策として、短期金利を調整するのです。
具体的には、短期金利が引き下げられると、市中銀行は借入を増やし、通貨供給量が拡大します。
これにより銀行は企業や個人への融資を増やし、その結果、経済活動が刺激されてインフレ率が上昇します。
反対に、短期金利が引き上げられると銀行の借入が減少し、通貨供給量が減るため経済活動が停滞してインフレ率が低下するのが一般的です。
金利の引き下げは景気回復を人為的に促進する手段として用いられるため、一般的に不況時には、利下げ政策が実施されます。
■ 利上げとインフレはどのように関係しているのか
不況時には経済を活性化させるために、金利を下げる政策が取られることが一般的です。
一方で、利上げすると消費が抑制され、インフレを抑える効果があるため、利上げとインフレは密接な関係があります。
わかりやすくいうと、利上げをすると企業や個人が金融機関で借り入れをする際に支払う利息が増えるからです。
これにより、企業は経費削減や設備投資を控えるようになり、個人は大きな買い物や消費を控えるようになります。
さらに、経費削減として人件費を削減するために、新規採用を控えたり、雇用を止めたりします。
そうなると、失業者が増えて、賃金も上がりにくくなるため、人々は消費を控えるようになるのです。
そして、借り入れや支出が減少し、人々は消費よりも貯蓄を選ぶようになります。
なぜなら、金利が高くなると貯蓄の利回りも上がるため、消費を控えて貯蓄を増やす傾向が強くなるからです。
インフレ時の利上げは、市場に出回るお金を減らして消費を抑えられるので、物価の上昇を抑制して経済を落ちつかせる効果があるのです。
■ 利上げで物価は変わるのか
利上げによって私たちの生活は、どのように変わるのでしょうか。
先ほどお話ししたとおり、金利が上がると人々は消費よりも貯蓄に向く傾向があるため、物やサービスは売れにくくなります。
これにより物価の高騰が抑制されるということですが、これは基本的な考え方のひとつであり、利上げが必ずしもインフレを抑制するとは限りません。
利上げをすると、利息が上がるため企業はお金を借りにくくなり、設備投資や新商品の開発が難しくなることから、株価が下がるのが一般的です。
また、金利が上がると住宅ローンの利息も上がります。
日本では、変動金利型の住宅ローンを利用している消費者が多く、短期金利が引き上げられると利息の支払いが増えます。
そのため、収入は増えないけれどもローンの金利が増えるため、支出が増えることになるのです。
こうしたことから、日本政府は利上げに対して慎重です。
また、利上げは、自国の利上げだけでなく、諸外国の利上げも国内経済に大きな影響を与えます。
なぜなら、日本はアメリカと経済的な結びつきが深く、アメリカドルは国際決済の基軸通貨であるためです。
そのため、米連邦準備理事会(FRB)が利上げすると、アメリカの債券やドル預金の金利が上昇し、その結果ドル高になり、日米金利差の拡大に伴って円の相対的な価値が低下します。
現在の円安ドル高も、アメリカとの金利の格差が要因のひとつです。
3. インフレから金の価格を推測できる?
金価格とインフレは密接な関係があります。
金価格の長期的な推移を考えると、金価格の主な要因はインフレ(物価上昇)の度合いです。
一般的に、「コアインフレ率」が進行すると金の価格は上昇する傾向があります。
これは、インフレが通貨の価値を下げるため、投資家や資産保有者が通貨価値を保護する手段として金を求めるからです。
歴史的に見ても、金はインフレにおける資産保護の有力な手段として機能してきました。
一般的には不動産や株式もインフレに強い資産とされますが、株価がインフレ時に上昇するのは、企業業績が良くなる傾向があるためです。
2022年のアメリカではインフレが進行していましたが、この時期において金の投資成果が株式を大きく上回ったことが確認されています。
次に、コアインフレ率についてくわしく解説いたします。
■ 具体的なインフレを知る、コアインフレ率とは
「コアインフレ率」とは、CPIの変動から天候の影響や市況などの外的要因の影響を受けやすい食品とエネルギーを除外したもので、基本的なインフレ率を示す指標です。
日本では、CPIから生鮮食品を除いたものをコアインフレ率としています。
変動の少ない品目を中心に計算されているので、経済の基調的な物価動向をより正確に反映するため、長期的なインフレを把握するのに重要視されています。
アメリカやヨーロッパ諸国では、コアインフレ率を物価の基調として使用しているのが一般的です。
中央銀行や政府は短期的な価格変動に左右されずに判断するために、コアインフレ率を利用して経済状況を評価し、適切な金融政策を策定します。
■ 世界のインフレ時の貴金属の価格
インフレ時には貴金属、とりわけ金の価格が上昇する傾向がありますが、各貴金属の価格はそれぞれの供給状況や産業需要の影響も受けます。
これは、過去の事例からもわかるように、インフレ時には資産を保護する手段として貴金属の需要が高まり、その結果価格が上昇するからです。
特に金は、「有事の金」や「安全資産」として知られるように、戦争や経済危機などのリスクが高まる際に金の価格は上昇します。
金は世界共通の価値を持ち、どこでも同じように取引されるため、インフレ時に価格が上昇する特徴があり、「インフレヘッジ」としても人気です。
インフレヘッジとは、インフレによる資産価値の減少を防ぐために、価格が上昇しやすい金や不動産、株式などに資産を移すことを指します。
銀は、産業用の需要も多いため、インフレ時には金と同様に価格が上昇する傾向がありますが、金ほど顕著ではありません。
また、プラチナも産業用途が多いため、工業生産の増減に影響を受けやすいのが特徴です。
インフレ時には産業需要が高まるため価格が上昇することがありますが、金や銀に比べると需要が少ないため、景気後退期には価格が下落するリスクもあります。
パラジウムは、主に自動車の触媒コンバーターに使用されるため、インフレ時に産業需要が高まると価格が上昇することがあります。
4. 利上げは意味がある
利上げは、物価が継続的に上昇するインフレを抑制するための手段です。
それは、金利が上がると、企業や個人は借り入れを控える傾向が強まり、消費や投資が減少します。
その結果、物価の上昇が弱まり、インフレが抑えられる効果があるからです。
つまり、利上げは経済のバランスを取るための重要な政策ツールであり、インフレ抑制、経済の過熱防止、通貨価値の安定などの役割があるといえるでしょう。