近年、金や貴金属の買取・販売において、悪質な業者による詐欺事件や不正行為が増加しています。
この流れにより、金・貴金属の買取業を営むわれわれのような業者に対しても、この問題にどう対応し、どう業界全体の信頼を守るべきかが問われています。
今回は、最近発生した2つの事例を元に、われわれ業者が果たすべき役割と責任について考えました。
事例1:山形市での金地金を巡る特殊詐欺事件(なりすまし詐欺)
2024年11月初旬、山形市。被害者が約3540万円相当の金地金を購入させられ、その後さらに現金390万円まで振り込まされるという、"特殊詐欺事件"が発生しました。
この事例では、詐欺師が「総合通信基盤局(総務省の部局)」や「警察」などの信頼できる組織を偽り、被害者の不安を煽って金を購入させるという手法が使われています。
事件の概要を以下に引用します。「被害者はどのように騙されてしまったのか?」という部分に注意しながら読んでみてください。
事件の概要
県警特殊詐欺対策強化推進本部によると、11月4日、山形市内に住む60代の男性のスマートフォンに「+1844」から始まる電話があり、男性が出ると、自動音声ガイダンスが流れ、「総合通信基盤局」と名乗る女から「あなたの携帯電話は2時間以内に使用停止になります」と告げられた。
電話は山口県警の「サカイ」を名乗る男に代わり、「あなたの携帯電話は不正使用されている」「○○という人物を知っているか」「あなた名義の口座が作られており、○○の犯罪に利用されている」「あなたも犯罪に関わっており、重要参考人として名前が挙がっている」と一方的に通告された。
その後、上司の「マツモト」という男に代わり、「検察が逮捕しようとしている」「身の潔白を証明するために協力してほしい」「口座のお金を調べる」と告げられたうえ、「LINEは使えるか」と聞かれた。男性が「使えない」と言うと、「これから捜査用の携帯電話を送る」と言って電話は切れた。
2日後の6日、スマートフォン1台が届き、7日にアカウント名「マツモト」からビデオ電話で「逮捕状が出ている」「あなたの口座のお金が汚いお金でないことを証明するため、口座番号や残高を教えてほしい」と言われた。
男性は身に覚えがまったくなかったが、「逮捕状」の写真が送られてきたことから、残高を伝えた。
「マツモト」は「紙幣番号を調べるが時間がかかる」「金に換えれば時間がかからない。11月末にはお返しする」「宮城県にある貴金属店で2・4キロの金を購入してください」と言われ、男性は「身の潔白を証明したい」と思い、8日に金地金2・4キロを約3540万円で購入した。
9日にLINEのビデオ通話がかかり、「これから金を受け取りに行く」「購入した金を玄関に並べてください」と言われたため、指示通り玄関前に並べた。しばらくして玄関前を見ると、金がなくなっていたため、男性捜査員が持って行ったと思ったという。
犯行はこれだけで終わらなかった。14日になってLINEに「汚い金の調査をするため、査察調査を行います」「定期預金を解約して、あなたの金融機関の口座に入れてください」「お金を入れたら、指定した口座に390万円振り込んでください」と言われたため、指示通りに振り込んだ。
しかし、その後、「マツモト」から連絡はなく、LINEもつながらなくなり、山口県警に問い合わせたところ、「サカイ」も「マツモト」も在籍していないことが判明。18日に山形署に相談して被害が発覚した。
出典:届いたスマホに「貴金属店で金購入を」「玄関に並べて」 3930万円詐取される 山形市 - 産経ニュース【web.archive.org】
この事件では、貴金属業者は直接関与していなかったものの、詐欺師が「金を購入することで身の潔白を証明できる」といった虚偽の言葉で消費者を欺いていました。
貴金属取引において『信頼性』というものがいかに重要であるか、改めて浮き彫りにしています。
さて、この事件には防止の余地があったのでしょうか?もし自分が標的にされたら……という視点から考えてみましょう。
心当たりのない電話番号には要注意
山形市内に住む60代の男性のスマートフォンに「+1844」から始まる電話があり、
出典:届いたスマホに「貴金属店で金購入を」「玄関に並べて」 3930万円詐取される 山形市 - 産経ニュース【web.archive.org】
まずは、ファーストコンタクトのこの部分。電話番号のシステムに明るければ「おや?」と気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
この「+1844」はアメリカ・カナダからのトールフリー番号(日本でいうフリーダイヤル)に該当しますが、昨今の日本では、この番号を使用した特殊詐欺の電話が横行しています。
現代の日本にお住まいであれば、このトールフリー番号から、まともな要件で着信されることはまずないでしょう。「+0120」からはじまる日本のフリーダイヤルでさえ、心当たりがない限りはよい着信の可能性は非常に低いわけで、海外電話ならなおさらです。
「+1844からはじまる番号の着信には出ない」はもちろん、「心当たりのない番号全ての着信に出ない」くらいの気持ちは持っておくべきといえるでしょう。
警察を名乗る電話は最初に真偽を確かめる
電話は山口県警の「サカイ」を名乗る男に代わり、~(中略)7日にアカウント名「マツモト」からビデオ電話で「逮捕状が出ている」
出典:届いたスマホに「貴金属店で金購入を」「玄関に並べて」 3930万円詐取される 山形市 - 産経ニュース【web.archive.org】
「警察を名乗り、逮捕の不安をあおる」ことにより、被害者は強い肩書きで相手を信頼してしまい、不安により判断力を奪われるという、非常に狡猾な手段です。
しかし、警察官はLINEを含めたSNSやビデオ通話で連絡でとることは絶対にありません。このような手段で連絡をはかってきた場合、その相手は詐欺師だと断言してよいでしょう。
また、電話越しに「警察です」と名乗ってきたり、警察手帳・逮捕状などを見せられた場合も、そのまま信じるべきではありません。必ず、その相手の
を確認し、近くの警察署へ連絡してください。
『警察をかたる詐欺』は、現代では常套手段となりつつあります。警視庁のHPでも警戒を促されているため、ぜひ確認してみてください。
「紙幣番号調べる」は全て詐欺!
「マツモト」は「紙幣番号を調べるが時間がかかる」「金に換えれば時間がかからない。11月末にはお返しする」「宮城県にある貴金属店で2・4キロの金を購入してください」と言われ、
出典:届いたスマホに「貴金属店で金購入を」「玄関に並べて」 3930万円詐取される 山形市 - 産経ニュース【web.archive.org】
この『紙幣番号』というワード、(嫌な話ではありますが)"詐欺業界の最新トレンド"です。
「紙幣番号から追跡捜査をする・確認する必要がある」といった言い草は、それっぽく聞こえて真実味を出すことができるのでしょう。事実、なりすまし詐欺の事件の実例においては、この『紙幣番号』というワードが頻出しています。
今回は"紙幣番号そのものではなく、金地金を挟むことで意識を更に散らす"という、より狡猾な手段をとっていますが、本質的な怪しさは変わりません。
通話の中で『紙幣番号』というワードが出現したら、「あぁ、この人は詐欺師なんだ」と思っておくくらいの心持ちでも、決してバチは当たらないでしょう。特に、その相手が『警察官』なら。
事例2:高齢者を狙った不正な買取行為
次に、貴金属買取業者が関与した、不正な買取行為についての事例をご紹介します。
神奈川県川崎市にある中古品買取業者の役員らが、2022年1月から7月にかけて東京都内で高齢者をターゲットにした悪質な訪問買取を行っていたとして、特定商取引法違反の疑いで逮捕されました。
容疑者らは、70代から80代の女性3人の自宅に訪れ、「不要なアクセサリーはありませんか?」などとしつこく迫り、貴金属を見せるように要求。
その後、「本物か調べる」と言って指輪やネックレスをペンチで切断した上、「本物ではない」などと嘘をつき、非常に安い価格で買い取りしたとのことです。
被害に遭った女性の一人は、20万円で購入した指輪を切断され、ほかの貴金属とあわせて1900円で売却させられてしまいました。
参考:貴金属など買い取る際に威圧的行為した疑いで逮捕の5人不起訴|NHK 神奈川県のニュース
この事件は、貴金属買取業者の信頼を大きく損なう極めて悪質なものです。
訪問買取自体は、店舗に行かずに売却したいと考えるお客様のニーズに応えて、大手の買取業者でも導入されている合法的なサービスです。
しかし、事前に連絡のない訪問買取や、売却の意思がない相手に無理やり査定を迫る行為は、特定商取引法第58条の6に抵触する違法行為となります。
「買取で騙された!」にならないための、詐欺・悪徳業者対策
上記のような詐欺や不正行為の被害に遭わないために、消費者ができる対策についてご紹介します。
身に覚えのない電話は冷静に対応
詐欺師は信頼できる組織を装って接触してきます。「警察」や「総合通信基盤局」などの名前で電話がかかってきた場合、すぐに対応せず身近な家族や警察に相談することが重要です。
詐欺師は巧妙な手口で不安を煽ってきますが、身に覚えがない話や金銭にかかわる話はとくに警戒心を持って対応しましょう。
アポなしの買取業者には要注意
訪問買取を受ける際には、事前に連絡があったか、相手の素性やどのような品物の査定や買取をしに来たのかを必ず確認してください。
査定を強要されることがあれば「買取の意思がない」とはっきり伝え、業者を家に入れないようにしましょう。また、査定後の金額に納得できなければ、即座に契約を結ばないことが大切です。
貴金属買取業者に問われる信頼と責任
これらの事例を踏まえ、貴金属買取業者に求められるのは、何よりも誠実で透明な取引を行うことです。詐欺や不正買取が横行する中で、消費者の信頼を得ることは容易ではありません。
しかし、業者が透明性を持ち、消費者に対して誠実な対応を行い、業界全体で問題に立ち向かうことができれば、貴金属業界の健全性は保たれるでしょう。
業者としての責任を自覚し、信頼されるサービスを提供することこそが、業界の未来につながります。
当店『金貨買取本舗』では、お客様が安心して貴金属の買取を行えるよう、全ての取引において透明性を確保し、丁寧な説明と適正な査定を実施しています。
また、訪問買取に関しては、事前の連絡と確認を徹底し、無理な営業や強引な取引は一切行っておりません。
私たちは今後も貴金属業界の信頼を守るために、適正で誠実な接客を徹底し、より良いサービスを提供してまいります。
参考:不用品回収相談所|あなたにピッタリな不用品回収業者1社をご紹介